そんなに独特?日本の運動会
学校で秋といえば運動会シーズン。
運動会では全校生徒が紅白に分かれて競ったり演技をしたり、応援合戦、お弁当など、こどもたちが楽しみにしている一年で最も楽しみな行事のひとつです。そんな日本の運動会ですが、外国から来た子どもたちにとっては少し戸惑うこともあるようです。指導員達が目にした、アメリカと中国から来た子供たちの声をご紹介します。
年に一度の大イベント
英語担当の清水指導員の話です。アメリカの学校では体育の授業は体操服にも着替えず、履いてきたブーツのまま授業を受けるほど、日本人からすると遊びの延長のようなものだそうです。
「アメリカから来た女の子を指導した時、その子は日本に来て運動会のダンス練習で隣の子にぶつかってしまい、その時に言葉がわからないながらも同級生を怒らせてしまったことにひどく落ち込んでいました。皆の真剣さにプレッシャーを感じ、その後の練習はすべて見学。運動会当日は結局お休みをしてしまいました。」
運動会は数ある学校行事の中でも特別大きなイベントです。運動会前は先生も子どもたちも熱が入り、まさに真剣そのもの!初めて運動会を体験する子ども達の中にはそんな熱気に「とてもついていけないな・・・」と圧倒されてしまう子もいるのかもしれません。
生徒全員が出場
中国遼寧省出身の王指導員の話です。中国とも運動会の印象は全然違うそうです。
「中国では選抜された生徒のみが出場し競う形式で、個人や学級間で競い合うことがメインです。種目も短距離走、幅跳び、障害物競走などの陸上種目のみ。出場する選抜選手以外の生徒は観客として競技中は掛け声で応援し、どの種目にも出ないという子も少なくないです。」
一方、日本の学校は全員が出場し、勝ち負け、点数のないダンスや組体操などの表現種目が多く、学年問わず全校生徒で協力し合って運動会を成功させることの大切さを重視しています。
同じく中国出身の高指導員が担当した子は、中国にはない組体操を初めて経験し、ポーズを維持することがなかなかできなかったそうです。しかし、同じグループの友達をがっかりさせるわけにはいかない!と奮起し一生懸命練習に取り組んだ結果、運動会当日は成功させることができたそうです。
お弁当で保護者も応援
子どもたちが楽しみにしているお弁当も、ちょっと変わって見えるようです。
前出の王指導員の話です。
「運動会を午前から午後にかけて行う場合には、昼食にお弁当を持って行く必要があります。校庭に敷いたシートの上で親子一緒にお弁当を食べるスタイルの学校も多くあります。しかし、中国の運動会は授業の一環なので保護者は参加しません。そのため中国出身の保護者はどんなお弁当を作れば良いのかわからず、子どもに菓子パン一個だけを持たせたという話や、みんなの保護者がくるものとは知らずその子の保護者だけ観覧に来なくて、生徒一人でご飯を食べたという淋しい話もありました。また、ものすごくお弁当作りに張りきって豪華なおかずをたくさん作ったのに、百均のタッパーに保冷剤なしで入れっぱなしにしたため、昼には腐って食べられなかったという話を以前担当した生徒から聞きました。」
欧米でもお弁当といえばリンゴ一個とサンドイッチとジュースなどが一般的なようです。日本のように色とりどりのおかずを栄養バランスも考えながら容器に詰めて、というのは作る側にはなかなかハードルが高いのではないでしょうか。
写真は自身も日本で子育てをしている王指導員が作ったお弁当です。
「日本の小学校は運動会以外にも、社会科見学や遠足などの行事でお弁当が必要な場合があります。親の手作り弁当は子供達の楽しみの一つです。私自身はあまり料理が上手じゃないのですが、娘に作った運動会のお弁当の写真を添付しました。どのようなお弁当を持たせればいいのか悩む外国出身の保護者に少しでも役に立てれば、嬉しく思います。」
慣れないお弁当作りは大変ですが、最低限「保冷剤で鮮度キープ!」だけは覚えて、できたらなるべくお子さんの応援にも行ってあげてくださいね!
雨で延期。振替休日も
私たちが日本語指導で学校に行くときに気をつけていることの一つに「雨が降った時の運動会延期のしくみの連絡」と「振替休日のお知らせ」があります。学年だよりや口頭で一斉にお知らせしても、外国から来たばかりの子どもやお手紙を読めない保護者にはうまく伝わっていないことがよくあります。私たちが指導で学校に行っている間に「今度の運動会、雨が降ったら翌日の日曜日になるけど、土曜日は月曜の授業の準備とお弁当を持って来ること」や、「月曜日は振替休日になるから学校には来ないこと」など、複雑な連絡内容は母語で連絡帳に書いたりご家庭に電話をしたりして事前にお伝えするようにしています。
学校によって対応が違いますので、うちの子の学校はどうだろう?と分からない時は、学校の先生に確認することをおすすめします。
中国語担当の肖指導員からはこんな話もありました。「来日したばかりのSくんはダンスの立ち位置がなかなか覚えられず、嫌気がさしてふざけたり、走るべきところで歩いたりしていました。同じクラスのこども達は「Sくんはなんで覚えられないの?なんで変なことをやるの?」と私に聞きました。「まだ慣れてないから助けてあげてね」と頼むと、隊形移動のとき小声で名前を呼んだり、手を引いたり、助けてくれる友達が増えました。思いやりのある優しいお友達がSくんの周りにたくさんいて本当にうれしく思いました。当日はお天気にも恵まれて、Sくんの初めての運動会は大成功でした。Sくんは『僕の白組が勝ったよ!』と、とても嬉しそうに運動会のことを私に話してくれました。
外国人児童が学校生活を楽しく過ごすために日本語の勉強は不可欠ですが、こうして先生や友達と一緒に何かを達成した楽しい思い出は最も成長につながるのではないかと思います。」
日本の運動会は、普段と違うお子さんたちの生き生きとした姿が見られる絶好のチャンスです。ぜひ日本と外国の違いを知って、親子で楽しい思い出を増やしていただけたらと思います。